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Author:チスイ

ハイデリンに住む多キャラ使い!
色々な姿で世界を駆け回ります。

 

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チスイの別ブログ

 

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【FF14】表裏邂逅・後編【職人の冒険秘話】

 

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「確かに受け取りました。依頼書の方よろしくお願いします」


冒険者ギルドでの窓口で納品の手続きを終わりを告げる言葉に私は小さく頭を下げて帰路につく。手には受け取った依頼書の束をしっかり持っていた。

 

 

私が知っていた世界はかなり狭い世界だったのだと思い知らされた。
チスイは私に本当に色々な事を教えてくれた。同時に私が父母から習った事は本当に逃げる事に特化していたのだと知る事になった。おそらくだけど父母もそれが精一杯であったのであろうと思う。チスイから色々な事を習い知っていく中で私はそう思うようになった。

 

チスイは不思議な人だ。まずとんでもなくバタバタと動き回っている。各地を飛び回っては冒険者として依頼を受けて解決し、職人として依頼の品を納品する。そしてその両方の経験から色々な人と面識がある。私が空腹を紛らわすべく無為に過ごしていた時間の何倍も動き回っている。
 

それにも関わらず私の事を決して無碍にしない。最低限の料理を教えてチスイが帰れない日も困らないようにしてくれたし、文字の読み書きも教わった。危険のない所には積極的に私を連れて行くしそこで私の容姿が目立つ事に気づき私がそれを気にする素振りを見せたら角が隠れるようなマスクも用意してくれた。
 

私の不慣れに付け込もうとした輩も言葉で、時には身体を張って守ってくれた。
 

「恩返し」という話は聞いた。だとしても文字通り赤の他人である私にここまでするのは驚きで、だからこそこの人を裏切ってはいけないと思うようになった。

 

私がチスイが作業場とした街中の一角に戻るとチスイは私が出た時と変わらず槌を振るっていた。今は冒険者としての依頼はなく、いくつか受けた職人としての依頼を片付けるつもりらしい。最初の頃はその日の予定を聞いていたけど最近は少しずつチスイの動きが分かるようになってきた。私はそのままチスイの作業が一区切りになるタイミングを見計らう。道具を握った時のチスイの集中力は凄く、いつもなら私が近づけば気づいてすぐに声をかけてくるのに、道具を握った時だけは気づかない事も多い。自然と私も集中した時のチスイには声をかけないようになった。
 

「あぁ、おかえり。納品は無事に出来た?」
 

私が何か出来る事はないかと探している間にチスイの方の作業の区切りがついたようで顔を上げた。私はコクリと頷いてそれに答える。チスイは笑みを浮かべると手にした槌を腰に収めた。
 

「明日、ウルダハの方で冒険者の方の仕事がある。今日のうちに移動して宿を取ろう」
 

私に説明しながら手早く作業道具を片付けて荷物をまとめ始めるチスイ。言われずとも私もそれをサポートする。
 

「……これを」
 

荷物をまとめ終えるとチスイがテレポを唱える前に冒険者ギルドから渡された依頼書の束を手渡した。
 

「新しい依頼書だね、ありがとう」
 

チスイはその場で私から受け取った依頼書に目を通していく。私はチスイの後ろに回ってその依頼書の内容も確認出来る位置に移動する。
この依頼書の束は基本的には誰でも受ける事が出来るものだ。それぞれの冒険者の技量に応じて難しい依頼は省かれるらしいけどチスイの束は明らかに分厚い。冒険者としてはもちろん職人としての依頼書も含まれている関係もあるのだが確認するだけでも一苦労だ。
チスイもその全てに目を通す事はない。ギルドもそれを理解しているのか大抵重要度の高い依頼を束の上にまとめてくれている。残りは余裕があればという案内に近い形なのだと教えてもらった。
パッと見た限りだけど今回の依頼書はどちらかと言えば職人向けの内容が多いように見えた。例の如く依頼書の束を上からある程度目を通したチスイは最後までは見る事なく目を通すのを止めてしまった。その表情はどこかもの悲しそうに見える。

 

「今すぐは受けるのは難しそうだね。このまま移動しようか」
「はい」

 

チスイが唱え始めたのを確認してから私もテレポを詠唱する。チスイについて移動するうちに私もテレポを使う事が出来ると分かってからは2度目以降に訪れる場所はテレポで移動するのが当たり前になった。詠唱を終えて再び目を開けるとウルダハのエーテライト広場に足を付けている。何度経験してもこの不思議な感覚には慣れない。
 

「ボク、マーケットに材料の補充に行ってくるから宿の方お願いね」
「分かりました」

 

手短にお互いの役割を分担してお互いに都市内エーテライトにアクセスするべくエーテライトに触れる。私は宿屋が併設されたクイックサンド前の都市内エーテライトに飛んだ。
 

 

ウルダハはやはり都市国家の中心という事もあってこれまでに何度も訪れている。クイックサンドでの宿「砂時計亭」のやりとりも慣れたものでスムーズに一部屋を取る事が出来た。
 

最低限の荷解きをしつつ、この後チスイがするだろう制作の準備を進めているうちにチスイが宿に入ってきた。
 

「ありがとう」
 

私が準備していた事に気づいてチスイはそうしてお礼を言う。私はペコリと頭を下げた。でもそこからの行動はいつもと違った。
私が出会った頃のチスイなら腰を落ち着ける事もなくすぐにでも受けている依頼の作業に取り掛かる。宿屋内で作業する事が難しければ作業できる場所を探しに行く。大体この2つのパターンしかない。でも最近のチスイは違う。宿屋備え付けの椅子に座りぼんやりと何かを考え始めてしまう。

 

私の把握している限り、今急ぎの依頼がないのも事実だ。でもそれなら急ぎの依頼を間に入れてしまうのがチスイである。砂時計亭には冒険者ギルドの窓口も併設されているのだから受けようと思えば簡単に受けられる。でもそれをしている様子はない。
 

そしてそういう時のチスイは他では見せないような不思議な顔をしている。
 

「ムクロ?」
「はい?」
「ち、近いよ?」

 

言われて私は自分がチスイの眼前まで迫っている事に気づいた。後2イルムでも近づいたら顔同士が触れてしまいそうなくらい近づいていた。
 

「ご、ごめんなさい」
 

 

私は慌てて距離を取る。私の行動が面白かったのか私が距離を取って再びチスイの顔を見た時にはチスイの表情から不可思議な意味合いは消えいつものチスイの表情に戻っている。
 

「一体、どうしたの?」
「えっと……大丈夫?」

 

チスイの問いにどう返して良いのか分からず私は問いで返してしまう。これでは何が何なんなのか分かるはずもない。ただ適切な言葉が出てこなかった。
 

それでもチスイは何かを察してくれたらしく笑みを浮かべそっと手を伸ばして私の頭に手をおいた。
 

「ムクロに心配させてちゃいけないね。ありがとう」
 

結局私にはチスイが何を考えているのかは分からない。ただ私の頭を撫でる手を受け入れる事しか出来ない。
 

最近ふと思う事がある、いつまでこうしている事が出来るのだろう。今のこの関係は一重にチスイの優しさに私が甘えただけの関係。もしチスイから一方的に今日でサヨナラと言われても私にはそれを拒否する事は出来ない。というよりしてはいけないと思う。ここまでしてくれた事だって十分すぎる事をしてもらったのだから。
 

「少し早いけどクイックサンドに降りて夕食にしようか。たまにはゆっくり食べよう」
 

チスイからの提案に私は頷いてチスイの後ろを付いて部屋を出た。

 

 


翌日、チスイは冒険者の服装で部屋から出ていった。今日の依頼相手は初めて依頼を受ける相手という事、ウルダハの商人の気質に合わせる為、私は連れて行かないと言われた。私はそれに従って部屋に残っている。
 

こういう時、私はチスイから教わった事の復習の時間に当てている。というよりそうするようにチスイに言われたのだ。
 

冒険者であるチスイに同行していると移動の時間も長く、そういう時にはやりにくい事を安全な部屋の中で行う。行うのはもっぱら読み書き。チスイいわく私は音に過敏らしくこうした部屋の中でやった方が良いと言われた。
幸いな事に読みの練習になるものは簡単に手に入る。冒険者ギルドの依頼書だ。チスイ宛の依頼書を読んで復習しながら、内容別に振り分けていく。これが私の読みの練習。

 

最初の頃は間違った振り分けをしてしまっていたけれど今ではチスイに教わったように振り分けが出来るようになってきた。
冒険者ギルドからの依頼は依頼の内容に合わせてある程度種類別に分類出来る。単純に敵を倒す事が目的の討伐任務、物の回収するのが目的の獲得任務、指定された地を回る巡回任務なんて冒険者ギルドがその内容に合わせて種類を決めているのだ。その種類を読み取り振り分けを行いながら依頼内容を読む。これをするだけでけっこうな時間が経っている。私の振り分けが遅いのとチスイ宛の依頼書は多いのがその理由である。

 

少しずつ束の量を減らしながらテーブルにいくつかの紙の山を作っていく。チスイが帰ってきたら答え合わせと改めて内容を確認してもらう意味でもこの山を見てもらわないといけない。最近は間違いも無くなってきたのでチスイはある程度確認した上で判断してくれるようになった。
今回はいつもの振り分けに合わせてもう1つ作業をしてみる。チスイが受けそうな依頼を優先して見せられるように工夫もしてみた。それが効果的なのかどうかは私には分からないけど、少しでもチスイの役に立ちたい。

 

 

今回も全部の束を振り分け終わった頃にはすっかり時間が経過していた。読み取れない文字はほとんどないし振り分けに関しても問題ないと思う。
 

振り分け終わった依頼書の山に僅かだけど達成感を感じる。これが少しでもチスイの為になっていたら良いななんて考えながら依頼書の山を見渡して1人頷いた。
 

ガチャッ
 

ドアの開く音に私がドアの方を向くと依頼を終えたらしいチスイが帰ってきた。
 

「おかえりなさい」
「……うん、ただいま」

 

チスイはいつになく気のない返事を返しながら部屋に入ってくる。ここ最近ボーッとしているタイミングが合ったのは見ていたけど、ここまで心ここにあらずという状態になったのは初めて見たと思う。
 

「どうしたの?」
 

私は思わず声をかける。そうしなければいけないように思う程にチスイの動きは怪しい。
 

「うん……いや、なんでもないよ」
 

チスイはやっぱり思った事を口にしようとはしない。自分の中で整理をつけるように首を2、3度横に振るといつもどおり振る舞おうと笑顔を見せる。
 

「今日は何をしていたの?」
「……文字を読む練習を」

 

努めていつも通りの声を出そうとするチスイに私は聞かれた事に答えるしかない。私が聞いた所でどうする事も出来ないのだからチスイから話そうとしない話を聞いた所でなのである。
 

「あぁ、依頼書振り分けてくれたんだね。ありがとう」
 

チスイはテーブルの上の振り分けた依頼書の山に気づいてそちらに歩み寄ると山の1つを手に取って確認する。
 

「うん、ちゃんと振り分けられてるね……あれ?」
 

パラパラと依頼書をめくっていたチスイの手が止まる。何か間違いがあったんだろうかと思ったがチスイは間違いを指摘するでもなく真剣な表情になって数枚依頼書を戻しては改めて何かを確認するようにして依頼書をめくっていく。
 

「これ、ムクロが並べ替えたの?もらった順番じゃないよね?」
 

私は思わずドキッとした。確かに並べ替えはしたけどそれは些細な事でいくらチスイでも気づくとは思わなかったし、気づかないで良いと思っていたからまさか指摘されるなんて思っていなかった。
 

「……今まで受けてた依頼に似ている奴を受けるのかなって思って……並べ替えました」
「これ全部並べ替えたの?」
「……ごめんなさい。私、余計なこと」

 

チスイはテーブルに置いたままの他の依頼書の山を確認しながら私に問う。私はチスイの顔を見る事が出来ないまま答えた。
 

「あぁ、ごめん。そうじゃないんだ。よく見てるなと思って。確かにこれボクが好む依頼順になってる」
 

チスイは次々と依頼書の山を確認しながら目を丸くしていた。てっきり怒られるんじゃないかと思った私はホッと胸を撫で下ろす。
 

「そっか……そっか」
 

チスイは依頼書を握りしめながら顔を伏せる。私からはその表情を読み取る事が出来ない。
 

「よし、決めた!!!」
 

私が表情を読み取ろうと少し屈んで顔を覗き込もうとするとチスイは勢いよく顔を上げた。真剣な瞳で私の方を見るとゆっくりとその距離を詰めてくる。
 

 

「ムクロ、もう君は1人でもやっていける。だからボクの所にいる必要はない」
 

突然だった。これまで何度も考えた事だったけどそれは本当に突然だった。
 

それはそうだ。私とチスイは全くの赤の他人。本当だったらチスイが私を助ける義理は一切ない。ここまでしてくれた事だって十分すぎる事をしてもらった。
拒否は出来ない。頭ではそう理解していたはずなのに気持ちがついて来ない。首を小さく動かす事さえ出来ずに立ち尽くすしか無かった。
チスイはそんな私の両手を取ると顔の前に持ち上げる。形的には両手を重ねて握手するような形になる。自然と私の顔もチスイを見上げる形になった。

 

「その上で、ボクからのお願いだ。ボクはこれからボクの為の会社を作る。ボクがやりたい事をやる為の会社。ムクロにその会社の社員第一号になってほしい」
 

チスイの行動の意味が理解出来なかった。そんなお願いをしなくても私はチスイについていくのに。
 

「でもいいかい?ムクロは自由だよ。他にやりたい事があるならそれで構わない。やりたい事が見つかったら辞めてくれて構わない。それまでの間だけでもお願い出来ないかな?ムクロが決めていいんだ」
 

私が……選ぶ。そんな事今までした事が合っただろうか。
両親に手を引かれてチスイに手を引かれてここまで来た。その手は確かに向こうからしっかり握られていてそこに私の意志はない。そうするしかなかった。

 

今私は自分で掴む手を選べる。掴まなくても良いと言う。でも私の思いはもう決まってる。
 

私はチスイに持ち上げられた手に力を入れてチスイの手を握り返した。

 

 

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